デロリアン大解剖

タイムマシン「デロリアン」ついて解説。
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 ドクが発明した『バック・トゥ・ザ・フューチャー』の顔とも言うべきタイムマシン「デロリアン」。きっかけは1955年11月5日、ドクがトイレで滑って頭をぶつけた際に「次元転移装置」のビジョンが浮かんだこと。それから30年かけて家も財産も全てつぎ込んで完成させた。デロリアンを選んだ理由をドクは「どうせ作るならかっこいい方がいい」と「デロリアンのボディは粒子の分散を…」の2点をあげている。
 タイムトラベルするには、まずタイムサーキットをONにして目的時間を設定。燃料が十分であれば、そのまま140キロまで加速すると次元転移装置が作動して車体は白く輝き、2本の炎の轍を残してタイムスリップ。目的時間になると3度のソニックブームと共にデロリアンが再び現れる。マーティ曰く、再突入時には衝撃があるらしい。

デロリアンがどの様な手順でタイムトラベルを可能にしているかは製作者たちも決めてないため正確にはわからないが、以下の様な原理だと考えられる。
・デロリアンが140キロに達すると、1.21ジゴワットの電流が次元転移装置に流れて作動。車体の上部の装置から時空の裂け目を作る。
・それと同時に1.21ジゴワットの力でタイムサーキットも動き出し目的時間への設定を始める。
・2つが揃った瞬間、デロリアンはタイムスリップを行う。

デロリアンの変遷
○PART1
 1985年10月26日に完成した最初のタイプ。リモコンで操作することも可能。140キロまでの走行は普通の車と同じくガソリンを使用する。1.21ジゴワットの電力は車体に後部に積んだ原子炉から発生させている。そのためタイムスリップごとにプルトニウムの補充が必要であり、ドクはリビアのテロリストを騙して入手している。またタイムスリップ後は非常に低温になるため車体が氷漬けとなる。この頃はスターターの調子が悪く、エンジンがかからないことがよくあった。ナンバープレートは「OUTATIME」。
 プルトニウムの代わりに時計台の落雷を利用するためトロリー・ポール(小説版の名称より)をつけたタイプ。稲妻の電流が直接、次元転移装置に流れる様になっている。
○PART2
 2015年でドクが改造を行なった世間に最も認知されているタイプ。最大の特徴は飛行機能とミスター・フュージョン。飛行機能によってデロリアンは140キロに加速するまでの長い助走を必要としなくなった。さらに、プルトニウムに代わって取り付けられたミスター・フュージョンは生ゴミを分解する力で1.21ジゴワットを生み出すと言う優れもの。だが、この頃からタイムサーキットの目的時間がバグるなどの故障が頻発する様に。ナンバープレートは未来のバーコードタイプ。
 ちなみに、コミック版によるとドクは飛行機能への改造費を捻出するため、2015年では超高額で取引されるスーパーマンの第1話が掲載されたDCコミック「アクション・コミックス」の創刊号を過去に戻って大量購入して、2015年で売りさばくというとんでもない方法で大金を用意した。
○PART3
 雷の直撃を受けたデロリアンはドクを乗せたまま1885年にタイムスリップ。西部の時代に取り残されたドクはデロリアンの修理を試みるが、タイムサーキットを制御する日本製のマイクロチップに代わる部品が1947年まで開発されないことを知り断念。1955年のドクに修理を任せるために炭鉱の洞穴に埋めた。そして、85年ドクの設計図を元に55年ドクが新たに取り付けたのが真空管を使用したビッグチップ(下記参照)。それまでタイムサーキットの中枢を担っていたマイクロチップに代わるものだ。また1885年の荒野を走行できる様に、車高の高いホワイトホイールタイヤに変わり、タイムトラベル時の光も白からオレンジになった。
 そして、数々のタイムトラベルをしてきたデロリアンの最終形態。燃料タンクに穴が空いて自力で140キロへの加速ができなくなったため、機関車に押して140キロまでいく作戦に変更(この間にウィスキーを燃料代わりに使用しようとしてマニホールドも破損させている)。そのためタイヤを車輪に付け替えて、線路の上をデロリアンが走れる様にした。さらにダッシュボードの上にはボイラーの温度がわかる計器が追加された。ここまで数々の改造をされてきたが、唯一次元転移装置とタイムサーキットだけは最後まで使用された。
 その後、1985年にタイムスリップ後、列車にひかれてデロリアンは完全に破壊された。

各装置の解説
①次元転移装置(Flux capacitor)
 タイムトラベルの核となる装置。運転席の後ろに設置されたこのY字型の装置から強烈な光が出ることでデロリアンは時空の壁を越えることができる。これを作動させるために時速140キロと1.21ジゴワットが必要。PART3で70年以上も放置されてもちゃんと作動するなど、故障が多かったデロリアンでもここだけは一度も調子が悪くなることはなかった。
 初期の脚本では"TFC(Temporal Field Capacitor)"と呼ばれ、デザインなども違っていたという(コミック版にも同名の物が登場する)。
②タイムサーキット(Time circuits)
 タイムスリップする行き先時間を設定できる装置。運転席に右に設置されたY字型のスイッチをONにすると、上から目的時間(DESTINATION TIME)、現在時間(PRESENT TIME)、出発時間(前回のタイムスリップした時刻:LAST TIME DEPARTED)が表示される。年代はキーパッドで自由に設定できる(月・日・年・時・分の順で入力)。時間はAM/PM表記だが、入力する際には24時間表記で行うと思われる(例:午後1時に行くのであれば13-00)。時間の色が赤・緑・黄色なのは映画『タイム・マシン 80万年後の世界へ』に登場したタイムマシンの時刻入力の色をオマージュしたもの。
 時空の壁を越えるのは次元転移装置の仕事だが、目的時間の設定は全てこのタイムサーキットにある日本製のマイクロチップが制御してたと思われる。だが、PART2のラストの落雷によって壊れてしまい、以後はビッグチップ(下記参照)で代用した。
③タイムトラベルの燃料
 タイムトラベルに必要な1.21ジゴワットの電力を発生する装置。最初はプルトニウムを燃料に原子炉を使って1.21ジゴワットを発生させていたが、1回つきプルトニウム1本を消費する上に、用意するのも容易なことをではなかった。さらに、補給の度に放射能防護服を着て行うなどの危険も。ちなみに、次元転移装置に電力を送るのはこの装置以外からも可能らしくはPART1で85年に戻る際には時計台の雷を直接、次元転移装置に送った。
 
 そして、ドクが2015年から帰ってくると新たにつけられたのがミスター・フュージョン(Mr. Fusion)」。生ゴミを燃料に核融合を行い、1.21ジゴワットを生み出す画期的装置。しかも、バナナ、空き缶、ペプシパーフェクトまで結構何でも入れられるようだった(毎回思うのだが、ドクはビールやペプシパーフェクトの残りを注いでから缶も入れるが最初からそのまま入れればいいのでは)。PART2で老ビフが燃料補給無しでタイムスリップしていることから、少なくとも2回分の電力は発生できると思われる(流石に帰りは55年で補給しただろう)。コミック版ではこの改造費を8200ドルとしている。
 当初はウェスティングハウス・エレクトリック・カンパニー(Westinghouse Electric Company)社製にするため同社のロゴを入れようとしたが断られたという。そのためもっと目立たないデザインに変えたが、Wの文字が残るようなデザインだけは残した。また、有名な話ではあるが、ミスター・フュージョンの小道具はドイツにある"KRUPS"のコーヒー豆挽き機をそのまま使用している。
④排気口
 原子炉を使用する際に必要な冷却口の役割を果たす2つの大きな排気口。個人的にはタイムマシン・デロリアンの最も印象的な部分だと思っている。燃料がプルトニウムからミスター・フュージョンに代わると飛行機能の噴射口として使用された。
⑤スピードメーター
 当時のアメリカの速度規制では85マイル(約136キロ)までしか出せないため、改造前のオリジナルのデロリアンのスピードメーターは85マイルまでしか表示されていなかったが、タイムマシンのデロリアンには95マイル(約152キロ)まで表示できるものに交換されている。また、ダッシュボード上にデジタル式のメーターが置かれ視覚的にスピードがわかりやすい様になっている。
⑥クリスマスツリー
 デロリアンの装飾を担当したシェッフェが名付けた「クリスマスツリー」と呼ばれる運転席後ろにある装置。下から緑、黄色、赤の順に並んでいるが「刺激的」という理由だけでつけられて正確な機能ははっきりしていない。
⑦メーター
 ダッシュボードの上に置かれた3つのメーター。左から"PRIMARY","PERCENT POWER","PLUTONIUM CHAMBER"と書かれている。1番右側がプルトニウムの燃料を表示しており、切れるとアラームが鳴るようになっている。ミスター・フュージョン設置以降はどうなっていたかは不明。
⑧タイムフィールドジェネレーター(Time Field Generator)
 名称は『週刊 バック・トゥ・ザ・フューチャー デロリアン』(デアゴスティーニ)のパーツ名より。車体上部につけられた装置で、合成の工程からの管理人の推測ではあるが、おそらく次元転移装置が作動した際に時間の裂け目をここから作り出していると思われる。
⑨飛行機能(ホバー・コンバージョン/Hover conversion)
 ドクが2015年で改造してもらったことでデロリアンは重力という壁すら突破した。運転席にあるスイッチで一つで、タイヤが90度に曲がって飛行モードになる(小説版より)。運転もどうやらそのまま自動車の運転と同じ感覚でできたよう。しかし、PART2のラストで落雷を受けたことで制御を担っていた飛行サーキット(Flying circuits)に過度の電流が流れて破損。2度と空を飛ぶことはなかった。
⑩ビッグチップ(真空管)
 こちらもデロリアンを装飾したシェッフェが名付けたニックネーム。マイクロチップならぬビッグチップということか。1985年ドクの設計図を元に55年ドクが新たに作ったタイムサーキットのマイクロチップに代わる真空管を使った装置。真空管を温めないと使用できないので多少待つ必要がある。

ーその他のデロリアンー

8人乗りデロリアン
 PART3のラストで時の旅人になったドクの新たな夢。それが1991年に設立された「フューチャー・テクノロジー研究所(The Institute of Future Technology)」。
 ここでドクは人生最大の発明品を改良して『8人乗りデロリアン』を開発した。次元転移装置は運転席側に移され、小さなモニターが付いているのが特徴であり、リモコンで時空を超えた遠隔操作も可能。さらに他のタイムマシンがどの時代にいるかがわかる「4次元タイムトラッキングスキャナー(sub-ether time-tracking scanner)」を新たに装備。
元々は研究所へ見学を来た人々を1日タイムトラベル体験する予定だったが、ビフ・タネンがデロリアンを奪ったことで時空を超える追走劇に発展することになった。
 ドク「そこで私が開発したのが科学の粋を集めた究極のこの1台。8人乗り新型デロリアン・タイムマシンだ。より速く、燃費も抜群、その上スマートなコンバーチブルタイプ。未来の天気はわからんが、もしわかるなら晴れの日を選ぶべきだな。曾々曾孫たちのドライブも、時代を越えたグループ交際もこのマシンなら不可能じゃない。だが、タイムトラベルにはもっと真剣な態度で臨むべきだ。特に君たちはね。いいかね、この事はトップシークレットだ」(ザ・ライドでのドクの解説より)。

パーシヴァルのデロリアン(『レディ・プレイヤー1』より)
 2018年に公開された『レディ・プレイヤー1』では主人公ウェイドことパーシヴァルの愛車としてデロリアンが大活躍した。基本的にはPART1のデザインは一緒だが、『ナイトライダー』に登場する人工知能K.I.T.Tが搭載されており、フロント部分にはセンサーライトが設置されている。またPART1仕様ながら飛行機能もついており、タイムサーキットの時刻もPART2の2015年から帰る直前の時刻になっている。ナンバープレートは"OUTATIME"などではなく"PARZIVAL"。劇中では冒頭のレースからクライマックスまで映画の顔として大活躍を果たした。これ以外にも映画ではウィルソン市長の選挙ポスターが出てきたり、「ゼメキスキューブ」を使用するとBTTFのテーマが流れたりファンにとってはたまらない作品だった。
 ちなみに、監督であるスティーブン・スピルバーグは「この映画で自己アピールをするつもりはない」と自らが関わった作品を出すことを嫌って、当初はデロリアンも登場させるつもりはなかった。だが最終的に原作者のアーネスト・クラインの説得とBTTFは監督ではなくあくまで制作総指揮だったことからデロリアンの登場を決めたという。
 原作である『ゲームウォーズ』のデロリアンのデザインは、映画版に加えて『バカルー・バンザイの8次元ギャラクシー』に出てきた物質を取り抜ける装置「オシレーション・オーバースラスター」が装備されている。さらに、両ドアには『ゴーストバースターズ』のロゴが貼られ、ナンバープレートもゴーストバスターズの「ECTO88」となっている。ちなみに、原作者のアーネスト・クラインは映画化に伴いデロリアンを購入し、小説版に合わせた改造を行なった。